YOSIXサブカル日誌

偏愛する音楽と映画についての独り言

映画「DUNE」の壮絶な映画体験

映画「DUNE」★★★★★

youtu.be

IMAXでの壮絶な映画体験

とりあえずこの映画の後編Part2の公開が2023年10月と知って絶望しています。そんなに待ちきれないよ!筆者にそう言わせるほどこの映画の世界観は求心力が強く、壮絶な映画体験となりました。監督のドゥニ・ヴィルヌーヴがストリーミングでの同時公開に異議を唱えていたのも大きく頷けるIMAXならではの映画体験。これを家のモニターで観るのとIMAXで観るのは天と地ほどの差があると思います。IMAXで上映していうちに急いで駆けつけることをお勧めします。(都内であれば品川の最後部席が筆者のお気に入りです。)

IMAXならではの映画体験」とは何か。映像の臨場感は言うまでもないのですが、今回筆者がこの映画で決定的に思い知らされたのは「音」です。体が震えるほどの低音の強さ。これはイヤホンや家のスピーカーなどの通常のリスニング環境では絶対に再現不可能です。この映画のもう1人の主人公は、音楽を手がけたハンス・ジマーと言えるかもしれません。それほどにこの映画で音楽が果たす役割は大きく、物語の饒舌な先導役になっているのです。

(ハンス・ジマーは80年代から活躍する映画音楽の大物で、「グラディエーター」(2000)で一般的な知名度を得て以来、最近のSF大作の音楽は必ずこの人のクレジットが上がります。ヴィルヌーヴの前作「ブレードランナー2049」(2017)では「ブレードランナー」(1982)の伝説的なヴァンゲリスのスコアを超えているかも聴きどころになっています。)

映像と音楽に負けていないナラティブ

肝心の映画の内容ですが、映像と音楽の力強さに負けることないナラティブになっており、脚本はクリシェから逸脱することに成功していると思います。どういう結末になるのかが予想できず、ワクワクドキドキが続くので、通常は長すぎて辟易してしまう2時間半の上映時間が適切に思えます。映画の中盤で発生する裏切りは「ゲーム・オブ・スローンズ」を彷彿とさせる番狂わせであり、実際に大きく意識されていると思われます。悪役の不気味さ、描写も史上最高。レベッカ・ファーガソン演じる母親像、女性の強さも最高です。また、ティモシー・シャラメの演じる主人公は絶えず不穏な予知夢を見て、その夢は悲劇的な結末を迎えます。その大部分は映画の進行とともに具現化していくのですが、映画が終わってみるとこの映画が何がテーマかがようやくハッキリします。それは意外にも「スターウォーズ」から前述の「ゲーム・オブ・スローンズ」と同じく普遍的なテーマだと気づかせられるのです。

キャスティングの適切さ

この映画のキャスティングの正しさも成功に寄与していると思います。ジェイソン・モモアチャン・チェンも素晴らしかったのですが、筆者が注目したのがシャーロット・ランプリングの存在です。古い映画を見てるとヴィスコンティの「地獄に堕ちた勇者ども」(69)やウッディ・アレンスターダスト・メモリー」(80)シドニー・ルメット「評決」(82)でお目にかかれるのですが、最近でもいぶし銀の女優ぶりを発揮しており、「さざなみ」(2015)でオスカー主演女優ノミネートを果たしています。ベールを被った老女役だったのが残念です。

f:id:YOSSIXX:20211107125000p:plain

チャン・チェン

f:id:YOSSIXX:20211107125226p:plain

シャーロット・ランプリング

f:id:YOSSIXX:20211107125306p:plain

f:id:YOSSIXX:20211107125442p:plain

 

監督ドゥニ・ヴィルヌーヴ

また監督のドゥニ・ヴィルヌーヴについては、「メッセージ」(2016)「ブレードランナー2049」(2017)とから3作連続SFなのでが、よくぞここまでオリジナルな世界観を構築するに至ったか、と感動しています。この人が注目されたのは「灼熱の魂」(2010)と「プリズナーズ」(2013)なのですが、この2作の特徴は「クセの強すぎる執拗な演出」だと思います。それがクソ面白さにもつながっていると思うのですが、時に過剰であり、やりすぎ感もあったと思います。その過剰さがどんどん抑制され、「メッセージ」(2016)あたりから普遍的な演出手法に変わっていったと思います。今回の「DUNE」ではその過剰さが遂にはミニマリズムにとって代わり禅を思わせる研ぎ澄まされた作風に落とし込まれています。

「DUNE」は何度か映画化される試みがあったのですが、筆者は何とも形容し難い出来だった1984年のデビッド・リンチ版しか見ておらず、この素晴らしくオリジナルな世界観を提示するヴィルヌーヴ版を見てようやく原作に興味を持ちました。後編が公開される前にもう一度リンチ版を見て検証したいと思ったのですが、ストーリーを知ってしまうと後編を見る楽しみが減るので、後編が公開される2023年を辛抱強く待ちたいと思います。

 

youtu.be