YOSIXサブカル日誌

偏愛する音楽と映画についての独り言

2023年アカデミー賞ノミネート映画マイランキング+雑感

ようやく主要オスカー候補作を見終わりました。
今年も長く辛い闘いでした・・ということで、早速100%個人的な趣味によるオスカー候補作のランキングをまとめてみました。

ある程度映画を見てる人向けランキングとなってる気がしますが、面白い映画を探す際の参考になりましたら幸いです。

1. トゥ・レスリー(6/23公開)
2. Tar
(5/25公開)
3. 逆転のトライアングル(
公開中)
4. ザ・ホエール
(4/7公開)
5. 西部戦線異状なし
(Netflix)
6. エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
(公開中)
7. アフターサン
(5/26)
8. バビロン
(公開中)
9. エルヴィス(
レンタル中)
10. イニシェリン島の聖霊
(公開中)
11. フェイブルマンズ
(公開中)
12.トップガンマーベリック
(レンタル中)
13.ブロンド
(Netflix)

*主要ノミネート作品のうち下記は未鑑賞。
「ウーマン・トーキング」(6/2公開)
アバター ウェイ・オブ・ウォーター」(公開済)
生きる LIVING」(3/31)
「ブラック・パンサー ワカンダ・フォーエバー」(Disney+)
その道の向こうに」(Apple TV+)

 

総評:
①ノミネートのバランスが良く、充実作が並ぶ

今年は久しぶりに見応えがあり、かつバラエティに富んだ作品が並んだと思います。「トップガン」や「アバター」などのビッグバジェット物から俳優部門にノミネートの「トゥ・レスリー」や「アフターサン」などのインディフィルムまでかなりバランスがよく、しかも見応えのある作品が多くなりあました。アクション映画からドラマ映画ファンまで、より共感度の高いノミネート状況になったのではないでしょうか。

セカンド・チャンスをテーマとする映画
「トゥ・レスリー」「Tar」「ザ・ホエール」「トップガン マーヴェリック」

③LGBTQ+の包摂が進む
「Tar」「ザ・ホエール」「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」

④炸裂する映画愛

「バビロン」「フェイブルマンズ」

ゲロ&クソまみれ
「逆転のトライアングル」「バビロン」

 

作品紹介と感想:
1. トゥ・レスリー

アンジェラ・ライズボローが主演女優賞ノミネート。
宝クジに当たって酒に溺れ、息子を捨てて家出した中年シングルマザーの話。人生のドン底に堕ちた中年女が、その後どのような人生を選ぶのかが最大の見どころになっています。自分はこの手の話にめっぽう弱いのです。人生のドン底にいるときに踠き苦しみ、その中から微かな希望を見つけてなんとか這いあがろうとする人間の努力は、とても貴重だと思っているからです。自分次第で誰にでもセカンドチャンスがあるとすれば失敗を恐れずに何にでもチャレンジできる。そのような社会や人生は素敵だと思いませんか?現実に苛まれて苦しいときにはこの映画の主人公の生き方を思い出せば、誰もが元気づけられると思います。ラストシーンでは自分の涙腺が爆発し、目から水を怒涛のように放出してしまいました。こんな人情味あふれる傑作が興行的にあまり話題にならず、作品賞や監督賞にノミネートされていないのはとても残念です。

2. Tar
イン・ザ・ベッドルーム」(01)「リトル・チルドレン」(06)で微かに覚えていたトッド・フィールド監督久々の新作は、映画史に残るような前衛的な作品になったと思います。またケイト・ブランシェットの性別を超えた演技は画期的で、主演女優賞に相応しいと思います。この映画の主題は2つ。一つ目は「権力の暴走」。映画後半で窮地に追い詰められた主人公が感情のままにとった行動はものすごくパンクで、あまりのシーンに大爆笑してしまいました。筆者は映画「マグノリア」(99)で突然空からカエルが降ってきて唖然としたシーンをなぜか思い出しました。この辺り、とても前衛的で、まさに映画芸術の真髄という気がします。二つ目のテーマは前述の「トゥ・レスリー」とも共通するのですが、「ドン底に落ちてから、人はどう生きるのか」。映画のラストでは前述の主人公の行動の結果が描かれるているのですが、何が起こったのかよく分からないままエンドロールが流れ、観客はその結末について考えさせられる結果になります。そのラストは主人公にとって有意義なものではありません。しかし人は希望さえ失わなければ、いつでも人生をやり直せることを示唆しており、そのメッセージに多いに励まされました。

3. 逆転のトライアングル
遭難する富裕層向けのクルーズ船を通して格差社会と資本主義の功罪が炙り出されるブラック・コメディ。近年の「パラサイト」や「万引き家族」でもとりあげられたテーマですが、行き過ぎた資本主義社会への監督の批判は強烈です。揺れが激しくなるクルーズ船は着飾った富裕層のゲロとクソまみれ。下品な表現が大嫌いな筆者ですが、ゲロ&クソがこんなに笑えるとは思いませんでした。ゲロ&クソの笑いのオブラートには包まれてはいますが、監督のメッセージはとても知性的です。ゲロ&クソでいえば8位に挙げたチャゼル監督の「バビロン」も富裕層に対してゲロ吐きまくり。この2作品の監督は余程お高く留まった人たちの世界が嫌いなんでしょうね。