YOSIXサブカル日誌

偏愛する音楽と映画についての独り言

ローラ殺人事件 (Laura,1944)

デビッド・リンチの「ツイン・ピークス」の元ネタらしい1944年の "Laura"をようやく観た。監督賞含むオスカー5部門ノミネート。

(2023年4月時点でDVDレンタル・配信なし、セルDVD有り)

初期ノワールの傑作として各種ランキングにもカウントされてるが、この時期のヒッチコック諸作等と比べてしまうと、特に目新しさは感じられない凡作。

ただ出色なのはDavid Raksinという人のスコア。

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デイヴィッド・ラクシン - Wikipedia

Laura (Original Motion Picture Soundtrack) [Digitally Remastered] by David Raksin on Apple Music

映画中にもレコードを掛けるシーンがあり、当時LPが発売されていたのか調べたところ1976年になってリリースされたことしか分からなかった。

で、本当に「ツイン・ピークス」の元ネタになってたかどうか、についてはローラの額縁に入ったポートレートや、もちろんローラ・パーマーの名前や他のキャラクターの命名、また殺人犯が身近な人物ということ以外は特に共通点は感じず。「ツイン・ピークス」は、あくまでもデビッド・リンチ自身のオリジナルな作風が強いように思う。

古き良き時代のノワール物が好きな方にはオススメの一本。

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Amazon | ツイン・ピークス ファーストシーズン [DVD] -TVドラマ

www.amazon.co.jp

 

 

2023年アカデミー賞ノミネート映画マイランキング+雑感

ようやく主要オスカー候補作を見終わりました。
今年も長く辛い闘いでした・・ということで、早速100%個人的な趣味によるオスカー候補作のランキングをまとめてみました。

ある程度映画を見てる人向けランキングとなってる気がしますが、面白い映画を探す際の参考になりましたら幸いです。

1. トゥ・レスリー(6/23公開)
2. Tar
(5/25公開)
3. 逆転のトライアングル(
公開中)
4. ザ・ホエール
(4/7公開)
5. 西部戦線異状なし
(Netflix)
6. エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス
(公開中)
7. アフターサン
(5/26)
8. バビロン
(公開中)
9. エルヴィス(
レンタル中)
10. イニシェリン島の聖霊
(公開中)
11. フェイブルマンズ
(公開中)
12.トップガンマーベリック
(レンタル中)
13.ブロンド
(Netflix)

*主要ノミネート作品のうち下記は未鑑賞。
「ウーマン・トーキング」(6/2公開)
アバター ウェイ・オブ・ウォーター」(公開済)
生きる LIVING」(3/31)
「ブラック・パンサー ワカンダ・フォーエバー」(Disney+)
その道の向こうに」(Apple TV+)

 

総評:
①ノミネートのバランスが良く、充実作が並ぶ

今年は久しぶりに見応えがあり、かつバラエティに富んだ作品が並んだと思います。「トップガン」や「アバター」などのビッグバジェット物から俳優部門にノミネートの「トゥ・レスリー」や「アフターサン」などのインディフィルムまでかなりバランスがよく、しかも見応えのある作品が多くなりあました。アクション映画からドラマ映画ファンまで、より共感度の高いノミネート状況になったのではないでしょうか。

セカンド・チャンスをテーマとする映画
「トゥ・レスリー」「Tar」「ザ・ホエール」「トップガン マーヴェリック」

③LGBTQ+の包摂が進む
「Tar」「ザ・ホエール」「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」

④炸裂する映画愛

「バビロン」「フェイブルマンズ」

ゲロ&クソまみれ
「逆転のトライアングル」「バビロン」

 

作品紹介と感想:
1. トゥ・レスリー

アンジェラ・ライズボローが主演女優賞ノミネート。
宝クジに当たって酒に溺れ、息子を捨てて家出した中年シングルマザーの話。人生のドン底に堕ちた中年女が、その後どのような人生を選ぶのかが最大の見どころになっています。自分はこの手の話にめっぽう弱いのです。人生のドン底にいるときに踠き苦しみ、その中から微かな希望を見つけてなんとか這いあがろうとする人間の努力は、とても貴重だと思っているからです。自分次第で誰にでもセカンドチャンスがあるとすれば失敗を恐れずに何にでもチャレンジできる。そのような社会や人生は素敵だと思いませんか?現実に苛まれて苦しいときにはこの映画の主人公の生き方を思い出せば、誰もが元気づけられると思います。ラストシーンでは自分の涙腺が爆発し、目から水を怒涛のように放出してしまいました。こんな人情味あふれる傑作が興行的にあまり話題にならず、作品賞や監督賞にノミネートされていないのはとても残念です。

2. Tar
イン・ザ・ベッドルーム」(01)「リトル・チルドレン」(06)で微かに覚えていたトッド・フィールド監督久々の新作は、映画史に残るような前衛的な作品になったと思います。またケイト・ブランシェットの性別を超えた演技は画期的で、主演女優賞に相応しいと思います。この映画の主題は2つ。一つ目は「権力の暴走」。映画後半で窮地に追い詰められた主人公が感情のままにとった行動はものすごくパンクで、あまりのシーンに大爆笑してしまいました。筆者は映画「マグノリア」(99)で突然空からカエルが降ってきて唖然としたシーンをなぜか思い出しました。この辺り、とても前衛的で、まさに映画芸術の真髄という気がします。二つ目のテーマは前述の「トゥ・レスリー」とも共通するのですが、「ドン底に落ちてから、人はどう生きるのか」。映画のラストでは前述の主人公の行動の結果が描かれるているのですが、何が起こったのかよく分からないままエンドロールが流れ、観客はその結末について考えさせられる結果になります。そのラストは主人公にとって有意義なものではありません。しかし人は希望さえ失わなければ、いつでも人生をやり直せることを示唆しており、そのメッセージに多いに励まされました。

3. 逆転のトライアングル
遭難する富裕層向けのクルーズ船を通して格差社会と資本主義の功罪が炙り出されるブラック・コメディ。近年の「パラサイト」や「万引き家族」でもとりあげられたテーマですが、行き過ぎた資本主義社会への監督の批判は強烈です。揺れが激しくなるクルーズ船は着飾った富裕層のゲロとクソまみれ。下品な表現が大嫌いな筆者ですが、ゲロ&クソがこんなに笑えるとは思いませんでした。ゲロ&クソの笑いのオブラートには包まれてはいますが、監督のメッセージはとても知性的です。ゲロ&クソでいえば8位に挙げたチャゼル監督の「バビロン」も富裕層に対してゲロ吐きまくり。この2作品の監督は余程お高く留まった人たちの世界が嫌いなんでしょうね。

映画「DUNE」の壮絶な映画体験

映画「DUNE」★★★★★

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IMAXでの壮絶な映画体験

とりあえずこの映画の後編Part2の公開が2023年10月と知って絶望しています。そんなに待ちきれないよ!筆者にそう言わせるほどこの映画の世界観は求心力が強く、壮絶な映画体験となりました。監督のドゥニ・ヴィルヌーヴがストリーミングでの同時公開に異議を唱えていたのも大きく頷けるIMAXならではの映画体験。これを家のモニターで観るのとIMAXで観るのは天と地ほどの差があると思います。IMAXで上映していうちに急いで駆けつけることをお勧めします。(都内であれば品川の最後部席が筆者のお気に入りです。)

IMAXならではの映画体験」とは何か。映像の臨場感は言うまでもないのですが、今回筆者がこの映画で決定的に思い知らされたのは「音」です。体が震えるほどの低音の強さ。これはイヤホンや家のスピーカーなどの通常のリスニング環境では絶対に再現不可能です。この映画のもう1人の主人公は、音楽を手がけたハンス・ジマーと言えるかもしれません。それほどにこの映画で音楽が果たす役割は大きく、物語の饒舌な先導役になっているのです。

(ハンス・ジマーは80年代から活躍する映画音楽の大物で、「グラディエーター」(2000)で一般的な知名度を得て以来、最近のSF大作の音楽は必ずこの人のクレジットが上がります。ヴィルヌーヴの前作「ブレードランナー2049」(2017)では「ブレードランナー」(1982)の伝説的なヴァンゲリスのスコアを超えているかも聴きどころになっています。)

映像と音楽に負けていないナラティブ

肝心の映画の内容ですが、映像と音楽の力強さに負けることないナラティブになっており、脚本はクリシェから逸脱することに成功していると思います。どういう結末になるのかが予想できず、ワクワクドキドキが続くので、通常は長すぎて辟易してしまう2時間半の上映時間が適切に思えます。映画の中盤で発生する裏切りは「ゲーム・オブ・スローンズ」を彷彿とさせる番狂わせであり、実際に大きく意識されていると思われます。悪役の不気味さ、描写も史上最高。レベッカ・ファーガソン演じる母親像、女性の強さも最高です。また、ティモシー・シャラメの演じる主人公は絶えず不穏な予知夢を見て、その夢は悲劇的な結末を迎えます。その大部分は映画の進行とともに具現化していくのですが、映画が終わってみるとこの映画が何がテーマかがようやくハッキリします。それは意外にも「スターウォーズ」から前述の「ゲーム・オブ・スローンズ」と同じく普遍的なテーマだと気づかせられるのです。

キャスティングの適切さ

この映画のキャスティングの正しさも成功に寄与していると思います。ジェイソン・モモアチャン・チェンも素晴らしかったのですが、筆者が注目したのがシャーロット・ランプリングの存在です。古い映画を見てるとヴィスコンティの「地獄に堕ちた勇者ども」(69)やウッディ・アレンスターダスト・メモリー」(80)シドニー・ルメット「評決」(82)でお目にかかれるのですが、最近でもいぶし銀の女優ぶりを発揮しており、「さざなみ」(2015)でオスカー主演女優ノミネートを果たしています。ベールを被った老女役だったのが残念です。

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チャン・チェン

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シャーロット・ランプリング

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監督ドゥニ・ヴィルヌーヴ

また監督のドゥニ・ヴィルヌーヴについては、「メッセージ」(2016)「ブレードランナー2049」(2017)とから3作連続SFなのでが、よくぞここまでオリジナルな世界観を構築するに至ったか、と感動しています。この人が注目されたのは「灼熱の魂」(2010)と「プリズナーズ」(2013)なのですが、この2作の特徴は「クセの強すぎる執拗な演出」だと思います。それがクソ面白さにもつながっていると思うのですが、時に過剰であり、やりすぎ感もあったと思います。その過剰さがどんどん抑制され、「メッセージ」(2016)あたりから普遍的な演出手法に変わっていったと思います。今回の「DUNE」ではその過剰さが遂にはミニマリズムにとって代わり禅を思わせる研ぎ澄まされた作風に落とし込まれています。

「DUNE」は何度か映画化される試みがあったのですが、筆者は何とも形容し難い出来だった1984年のデビッド・リンチ版しか見ておらず、この素晴らしくオリジナルな世界観を提示するヴィルヌーヴ版を見てようやく原作に興味を持ちました。後編が公開される前にもう一度リンチ版を見て検証したいと思ったのですが、ストーリーを知ってしまうと後編を見る楽しみが減るので、後編が公開される2023年を辛抱強く待ちたいと思います。

 

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日常生活における摩擦をノイズにして撒き散らし続けるLowとMogwaiの新譜

Lowの新譜が相変わらず良いのです。

(*下記リンクはApple Musicへのリンクとして音源紹介目的で貼っています。踏んでも筆者には1円も入りません。)

music.apple.comh90年代から活躍するミネソタ出身の男女デュオ。スロウコアのムーブメントから出てきて今でもコンスタントに新作を出してる貴重な存在になりつつあると思います。歪んだ音像の下のレイヤーにはポップなメロディが流れていて、そのどちらにも振り切れないのがいい。スピリチュアライズドに通じる瞬間もある。筆者はこういう音を聞いていないと日常生活をやりすごせないのです。ひょっとしたら日常的にヘビメタを聴いてるおっさんと同じ精神構造なのかもしれない。クソッタレな日常からの捌け口として機能しているのですよ。

Lowの前作"Double Negative"は筆者の2018年度の年間ベスト3。(1位は同点でSOPHIE "Oil of Every Peal's Un-insides"、Yves Tumor "Safe in the Hands of Love")

music.apple.com元々はこの静謐なクリスマスアルバムを聞いたことがきっかけでこのバンドのファンになったのです。このアルバムはこれからの時期、ぜひ聴いて欲しい一枚。

music.apple.comこの人たちのライブはまだ見たことがないのでフェスに是非よんでほしい。シューゲイザー好きの人たちはこういうのは聞かないの?ちゃんと聞いてほしい。笑

2枚目の新譜はモグワイ

この人たちもコンスタントに良作を発表してるのですが、最近話題になることは滅多になくなりましたね。もったいない。

music.apple.comこの新譜は4曲目のボーカル入りRitchie Sacramentoで一旦ピークをつけた後も至福の音が舞い降り、ラストに向けてビルドアップしていくという構成です。

モグワイフジロックで一時期毎年のように見てたのですが、最近はコロナもあってめっきり見なくなってしまいました。久々に秋風の吹き荒ぶホワイトステージで見てみたい。

・・単にフェスロスなだけかもしれません。

映画「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」の保守性と飛躍するアジア系監督

遅ればせながら007シリーズ最新作「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」の感想をば。★★★

初めて007シリーズに興味を持ったのは「アメリカン・ビューティ」(99)のサム・メンデス監督が撮ると聞いた「007 スカイフォール」(2012)から。急いでダニエル・クレイグが新しいボンド役となった「007 カジノ・ロワイヤル」(2006)と「007 慰めの報酬」(2008)を予習してから劇場に向かいました。結果、大興奮。遡って見ていた昔の007ってこんなに面白かったっけ?となりました。「スカイフォール」に続いてサム・メンデスが撮った「007 スペクター」(2015)もそこそこ面白かったです。

Sam Mendes

今回その続編をサム・メンデスではなく日系監督のキャリー・フクナガが撮ると聞き、またまた大興奮!キャリー・フクナガはHBOドラマの「TRUE DETECTIVE」シーズン1(2014)を見てからというもの今後の映画界を担う大物になると確信していたので、コロナによる度重なる公開延期を嘆きながらも期待は大きかったのです。「TRUE DETECTIVE」シーズン1の画期性とは、90年代に若手俳優として活躍したマシュー・マコノヒーウディ・ハレルソンが演技派として復活する契機になった作品であることのみならず、広大な自然の景観を俯瞰するスケール感。自然の景観もキャストの一員であるかのように語りかけるものがあり、とてつもなくドキドキするのです。フクナガ監督自身も画像のようにクールなイケメン。

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背景情報はさておき、期待が大きかった「ノー・タイム・トゥ・ダイ」の本編ですが、やたら金の掛かった派手さやこの監督の得意な壮大なスケール感を楽しむ一方で、どんどん冷めた目で見てしまったというのが正直なところ。その要因としては、①日本文化のモチーフ(能面、日本庭園、着物など)が悪の象徴としてステレオタイプ的に使われているところや、②どこまで行ってもこの映画は白人カップルの話なんだな、と思わせる多様性のなさで、ひと昔前の世界観から抜け出せていないところ。①の東洋=悪の権化的なイメージは監督自身も日系であり、どういう思いで使用したのか一度本人に問い詰めてみたいところ。日系といっても純アメリカ人なメンタリティで、ステレオタイプについて考える余地はなかったのかもしれない。或いは007シリーズ原作のイアン・フレミングの世界観自体が旧式な価値観に基づくものであり逸脱を意図してなかったのかもしれない。どちらにせよ、とても古臭い価値観に基づく映画の側面が強調されているのように感じてしまいました。この点は、くしくもこの映画が多分に意識しているであろうマーベル映画が黒人キャストがメインだったり、女性ヒーローが活躍するのと比べてしまうと、さらに同時代性との乖離が浮き彫りになってしまいます。あくまでも白人の大人(老人?)が見て安心できる世界観に留まっているのです。サム・メンデスが監督した前2作も基本は同じ世界観であるにも関わらず今回強くそう感じてしまった要因は何なのか、過去作を再見するときが来たら検証してみたいと思います。

残念ながら期待に反して個人的にはあまり楽しめなかったキャリー・フクナガの007ですが、この監督の動向には引き続き注目していきたいと思っています。また、筆者が昨年見た映画のナンバーワンで涙が止まらなかった「ミナリ」の監督リー・アイザック・チョンは韓国系の監督。またオスカーを受賞した「ノマドランド」のクロエ・ジャオは中国系。上記の監督全員の作品から自然光の利用が上手いテレンス・マリック監督の影響を色濃く感じます。現在活躍するアジア系監督がマリックを崇拝しているのは単なる偶然でしょうか?上記3監督の動向には引き続き注目したいと思います。

HalseyとArca新作に見る「絶対安全地帯」から鳴らされる音へのアンチテーゼ

タイトルの「絶対安全地帯から鳴らされる音」とは、マーケティングの産物であり商業化されたコマーシャルベースの音楽のこと。ひと昔の言葉で言うと「産業ロック」。自分にとってはボン・ジョビであり、クイーンであり、U2であり、コールドプレイである。

みんなでシンガロングできる音楽の意義もそれなりにある。幼少時、80年代にラジオから流れていた音の大半はそんな音楽だった。今ノスタルジーをもって聴くと80年代映画で流れてくるフィル・コリンズなんか最高である。安っぽいスネアとシンセ音はまさに80年代。日本でAORと呼ばれている音楽、アメリカではおそらくアダルト・コンテンポラリー・ロックというジャンルは、今でもBGMとして軽く聞き流すにはオシャレで最高。

ただ、現在進行形の音楽としてそのような音楽を聞きたいかと言えば、自分の答えは一貫してNO。コンビニで鳴ってる音楽を聞きたいならばコンビニに行けば良い。できるだけ誰も知らない良質な音楽を常に発掘していたい。

そんな「産業ポップ」「産業ロック」が相変わらず蔓延っている最近、自分の耳を捉えた音楽がHalseyの新作とArcaの新曲。

Halseyという人は前作のジャケからしてパッとしないカントリーポップ(失敬)としか認識しておらず完全にノーマークだった。

なので、新作の、まるでHBOドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のような台座に座って赤子にチチ出し授乳している衝撃的なジャケを見ても同一人物とは認識できなかった。

更に音を聞いてみて驚いたのは、これは一聴して実質ナインインチネイルズではないか、ということ。実際に全曲がトレントレズナーとアッティカ・ロスによるトラックらしい。しかもナインインチのトラックに女性ボーカルが乗ると新鮮に聞こえること、この上ない。

youtu.be

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アルバムタイトルは、「我、愛が得られずんば権力を欲っす」(筆者超訳

シングルカット曲は、「わたしゃ女じゃねえ、神様だよ。」(筆者超訳

最高にヒリヒリするロックじゃないか。どうして、こうなった?!

経緯を探ろうと最近の日本の洋楽誌を漁っても完全ノーマークだった。日本のロックジャーナリズムよ、もっとちゃんとしてくれ。

英語版Wikipediaによるとシネマティックな音にしたくてトレントにアプローチした模様。カントリーポップからいきなりゴスの女王になった27才。今後が楽しみである。

次の曲はArca新作からの先行シングル、「Born Yesterday」。

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00年代以降、下火となりアンダーグラウンドになりつつあるエレクトロニック・ミュージック。その中でビョークともコラボし、イノベイターであり続けたArca。この人のディスコグラフィは近未来的な音で満たされており、過小評価も甚だしいと思う。

またこの人は性自認が女性だったのか、このMVでは完全に見てくれが女性になってしまった。しかもかなりキレイである。

その時代を先取りした外見のフリーキネス、アバンギャルドさ加減を補って余りあるのがSiaのゲストボーカル。この新曲では同じくアバンギャルドな方向性が一致しているビョークではなく、普遍的なメジャー感のあるボーカルのSiaを選んだのが大正解で、ラジオから流れても全く違和感のないポップスに聞こえる。その背後では終始プチプチと変態的な電子音が聞こえてくるのが、特に最高。

まさにSia自身が体現している産業ポップに対する革命である。

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